チタン製の結婚指輪は修理不可能&使い捨て?職人として僕がおすすめしない理由

 

 

時代の変化と共に、ブライダルリングを含めたジュエリーに対しての価値観も多様化。

特にここ10年程で大きく変化したというのが僕の感覚です。

婚約指輪は必要ない、結婚式を挙げない、新婚旅行に行かない、結婚指輪はネットで買い宅配してもらう、そもそも結婚指輪も要らない、など。

今まで当たり前であった、ブライダルリング=貴金属

といった価値観にも少しずつ変化が起きています。

 

差別化を図る為に登場したのが、チタン素材で作られたアクセサリーやジュエリー。

オフの日に着けるファッションリングならば良いかも知れませんが、ずっと身に着ける結婚指輪としては最悪の素材だと僕は言っておきましょう。

この記事では、なぜ僕がチタン素材の結婚指輪をおすすめしないのか、理由と共に解説します。

悪質な業者に騙されたり購入後に後悔をしないよう、これから説明する理由や素材の特性を理解しておきましょう。

 

 

チタン製品の特徴

 

チタンで作られたアクセサリーやジュエリーの特徴は

  • 安価
  • アレルギー反応が出にくい
  • 硬い(丈夫)
  • 着色がしやすい

 

 

チタンである事のメリット

 

唯一のメリットは値段が安い事。

ただそれだけです。

チタン製品を扱う業者は必ずと言って良い程、”アレルギー反応を起こしにくい” といった事を謳います。

それは紛れも無い事実です。

実際に貴金属で最もアレルギー反応が出にくいと言われている、金やプラチナよりも若干アレルギーが出にくい素材です。

一方で、プラチナ900やハードプラチナ900、プラチナ950などの素材でアレルギー反応を示したといった方には、職人人生十数年の間に僕はまだ1度も出会った事がありません。

また、プラチナ製品を身に着け皮膚が炎症を起こしたケースでは、プラチナに対するアレルギーの反応ではなく、日常生活で蓄積された汚れが指輪の内側などに溜まり炎症を起こす場合が多いといった事実を多くの方は知りません。

(このパターンでの皮膚の炎症は、どの材質でもデザインによっては起こりえるので素材が原因にはなりません。)

 

もちろん素材を選ぶのは購入者であり個々の好みもあるので、絶対に駄目だとは言いません。

ただし、それはここから説明するデメリットや特性をよく理解してからにして下さい。

 

 

チタンである事のデメリット

 

 

デザインの種類が限られる

チタンを含む特定の金属は難削材ナンサクザイと呼ばれ、文字通り、切ったり削ったり加工が難しい材質の事を指します。

僕らが日々ジュエリー制作に使用する工具では加工が非常に困難です。

不可能ではありませんが、ヤスリや刃物がすぐに使い物にならなくなってしまいます。

基本的には特殊な機械や大掛かりな設備が必要となります。

鋳造方法(金属を流して型取る製造方法)も一般の貴金属とは全く別の方法となり、その機械では細かいデザインには対応出来ません。

必然的にベーシックなデザインばかりになります。

これがチタン製品が面や模様を少し装飾した程度のものしか存在しない理由です。

 

 

カットが困難

糸鋸イトノコやリングカッターでカットが困難。

つまり、

  • 事故や怪我で指が腫れてしまって抜けない
  • 太って気付いたら指から抜けない

 

・・・といった場合に大変危険です。

 

指輪が抜けなくなった場合のカットに関しては、こちらの記事をご覧下さい。

抜けない指輪は必ず工房でカット!消防署でカットすべきではない理由。

2019-05-30

 

 

カットが “困難” といった表現をしましたが、正確には頑張れば切れます。

・・・が、恐らく専用の刃を2~3枚はダメにしてしまうでしょう。

こうした事から、ほとんどのジュエリー工房ではお断りされます。

 

消防署であれば、人命が最優先なので刃が何枚ダメになろうが切ってくれるでしょう。

ただカットしたら最後、元通りには必ず戻りません。

なぜなら、先程説明したように僕ら職人の工具では固すぎて加工が困難だからです。

 

修理を引き受けてくれる可能性がある場所としては、実際にチタン製品の取り扱いがある工房ぐらいだと思います。

それでもそのお店で販売された品じゃなければ、引き受けてくれない場合もあります。

 

 

サイズが直せない

カットが困難な素材という事は、当然サイズを直せません。

一生指のサイズが変わらない人間は存在しません。

結婚指輪だと、だいたい10年以内に1度はサイズを直す人がほとんどです。

事故、怪我、病気などで一時的に指のサイズが小さくなる事があっても、生活と共に男女共通して指の関節や節々が張ってくるので、少しずつ大きくなる傾向にあります。

(結婚してから奥様の手料理が美味しい男性は、比較的早く指自体が太くなる傾向も・・・笑)

言い換えれば、サイズが合わなくなったら使用出来ない売り切り。

 

 

修理不可能

繰り返しお伝えしますが、僕ら職人が使用する工具が入っていかないと言う事は、基本的にどんな修理も不可能という事。

切削作業も非常に困難です。

一般的なジュエリー工房で唯一手が入る部分と言えば、ほんの少しだけ表面の研磨が出来るか出来ないか程度ではないでしょうか。

溶接修理も貴金属で作られたジュエリーであれば、バーナーで溶接が可能ですが、チタン素材のものは大掛かりな機械が必要な場合があります。

 

 

貴金属ではない

何か色々とアクシデントが無い限り、滅多に結婚指輪を売る事にはならないとは思いますが、チタンは金属であっても貴金属ではありません。

 

つまり他の宝飾品のような資産的価値は一切ありません。

 

そもそも、貴金属とはどんな種類の金属を指す言葉なの?という方はこちら。

 

貴金属とは

化合物をつくりにくく希少性のある金属という条件を満たす元素は、 (Au)、 (Ag)、白金 (Pt)、パラジウム (Pd)、ロジウム (Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム (Ru)、オスミウム (Os) の8つであり、これらを一般に貴金属元素という。

Wikipedia – 貴金属より

 

金、銀、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、これらが貴金属です。

(オスミウム以外は宝飾品全般で日常的に使用されています。)

チタンはこの中に含まれない為、貴金属ではありません。

不要になった貴金属は、買取業者に持ち込めばその日の相場のグラムで買い取ってもらえますが、チタンは価値が無いので売れないという事です。

 

 

金属アレルギーのパッチテストや血液検査での落とし穴

 

皮膚科などのクリニックに行けば、パッチテストや血液検査による金属アレルギーテストを受ける事が出来ます。

ただ、多くの人が誤解をしているので注意して欲しい事があります。

 

誤解しないで欲しい事

例えば、

クリニックでプラチナに対するアレルギーテストが無反応だった=全てのプラチナ製品が大丈夫

という訳ではありません。

 

ちゃんとしたクリニックでテストを受けたのに、なぜその結果を信じてはいけないのか?

何も知識が無い方はなかなか気付くのが難しい部分かも知れませんが、答えは非常にシンプル。

単一の金属だけで作られたジュエリーはほとんど存在しないからです。

 

プラチナジュエリーであれば、プラチナの他にルテニウムやパラジウム。

ゴールドジュエリーであれば、金の他にも銀や銅が混ざっています。

クリニックでのアレルギーテストは、あくまでも銀、金、プラチナなどの単一の素材に対してのアレルギー反応テストです。

実際のジュエリー製品の配合のように、様々な素材が混在する貴金属に対するアレルギーテストではありません。

 

こうした要因から、皮膚科での金属アレルギーテストは100%保証するものではない、という事を覚えておいて下さい。

 

 

一部例外もある

純プラチナ製品や純金製品は例外です。

しかしジュエリーの材料としては柔らか過ぎる為、形を長年維持する事が難しく実用的ではないので、近年では全く見かけなくなりました。

当然貴金属、つまり原材料が高騰しているので作れない背景も影響しています。

ただでさえ18金が金ジュエリーの当たり前の配合だったのが、今では14金、12金、10金と、金の純度を落とさなくては、製造側が同じ利益を得る事が出来ません。

ブランドやメーカーも純度を落とす事でボリューム、デザイン、価格のバランスを取っている訳です。

昔は純プラチナや純金で出来た製品は多くありましたが、あくまでも資産的な価値を前面に押し出し付加価値をつけて販売をされていた時代の事。

これらの素材は磨耗や変形がすぐに起こってしまう為、普段使いのジュエリーとしては不向きな材質です。

 

 

どの販売業者も共通した売り文句

 

どこの販売業者も必ず「金属アレルギーを起こしにくい」とか、「金属アレルギーも安心」なんてチャッチフレーズを謳い文句にして攻めてきます。

・・・当然ですよね?

安さ以外のメリットとしては、

  • アレルギーを起こし難い
  • 丈夫
  • 鮮やかな色を着色できる

この3点しか存在しないのですから。

 

チタンという特殊な素材のメリットもデメリットも限られてしまい、販売元や製造元によって差別化する事が難しい現状があります。

それ故にどこのメーカーを見ても同じような謳い文句が書いてあり、どうもどこも似たか寄ったか・・・といった状況に。

 

 

なぜチタン製品を扱う業者が増えてるのか

 

1つ上の項目の最後に、

チタンという特殊な素材のメリットもデメリットも限られてしまい、販売元や製造元によって差別化する事が難しい現状があります。

と言いました。

(大事な事なのでもう1度言いました。)

 

現状の技術では限られた幅のデザインしか作れない、他社と差別化をする事が難しいのに、なぜそれでもチタンの取り扱い業者が増え続けるのか?

 

それは、以下の要因が大きく影響します。

 

 

粗利

金、銀、プラチナなどの貴金属と比べて、チタンの原価は相当安価。

それが珍しいだけで、他の金やプラチナ製品と同じ値段やそれ以上の価格で販売されていれば、それは粗利が凄い事になりますよね。

ラーメン屋がコンビニの数程あり、常に絶えないのと同じ。

しかも細かいデザインに対応しないで済むなら、製造過程の手間が大幅に省けますね。

 

 

他フィールドからの参入

チタンを取り扱う業者で多く見受けられる傾向の1つ。

既に解説している通り、チタン製品を作る際には通常の鋳造技術とは異なる技法と機械が必要となります。

そこで、チタンやステンレスで機械のパーツを作る企業が、事業拡大と共にジュエリーに手を出すパターン。

状の技術では、チタンを使用するどの道現限られたデザインしか製造出来ないので、高いデザインセンスなどは求められず、自分達が今まで得意としてきた技術が活かせる。

こうした背景からアクセサリーやジュエリー製造に乗り出してくる企業が集まってきます。

 

 

チタンの着色は色落ちする

 

これまたチタン製品を扱っているブランドやメーカーは必ず出してくる戦略なんですけど、通電させる事で表面に酸化皮膜を張り、色が変わったように見えるといった現象。

表面に別の素材を付着、コーティングさせる一般的なメッキとは異なり、チタンの表面一部を電気によって見せ方を変える・・・といった表現が分り易いかも知れませんね。

 

sora titaimum rings

 

さて、この着色された色なんですが、磨耗と共に落ちます。

結婚指輪を購入を検討しネット検索をしてる人、この事実を知らないでチタン製を候補に挙げてる人が意外に多いので要注意。

 

昔、チタン+着色が流行った時代があり、とあるメーカーが色落ちについて説明していなかったのか色々と騒がれ訴えられた事がありました。

最近は詐欺だと訴えられるケースは全く聞きません。

ある程度色が落ちる事については説明されるようになったのでしょう。

この記事を書く際にネットを検索してみた感じでは、”色が落ちてきたら再度着色出来る” といったサービスを展開しているメーカーが多かったですね。

 

 

まとめ

 

つい先日も僕が接客したお客様に、12万円のパードプラチナ900製の指輪を見せたら、「この指輪高くない?俺の結婚指輪7000円だったんだけど?」と言われました。

(・・・ん?7000円!?50~60年前の相場だったらあり得るかも知れないけど、現代の物なら何か安価な材料で作られたに違いない。)

そのお客様は僕に “シルバーの結婚指輪をしている” と仰っていましたが、指輪の素材ではなく表面の色の事を指していたのか!!・・・と後から気付く。

シルバーでも金でもプラチナでも無く、チタン製品だったのです。

自分がどんな素材の指輪を購入したか認識していらっしゃらなかったので、僕が指輪を手にとり、「これはチタン製品ですね」と言い、特性などを伝えました。

それでも全くピンときていない様子。

 

こんな人がまだまだ世の中溢れています。

それ故に「知識や拘りが無い人達を一網打尽に囲い込み売りつけよう!」と、低価格を前面に押し出し販売する業者は後を絶ちません。

安い原価で作ったものを高価な値段で販売出来たらボロ儲けですからね。

一度体験してしまうと後には戻れないのでしょう。

・・・というのが僕の個人的な感想です。

 

これから何かアクセサリーやジュエリーなどの購入を検討している方は、是非それぞれの素材の特性を理解した上で選ぶ事を心掛けて下さい。

理解し比較した上で、その中から選ぶのは貴方です。

素材に関してのまとめ記事が書け次第、こちらにもリンクを貼りたいと思います。

 

結婚指輪に限らず、僕がオーダーを頂きジュエリーを作る場合、常に素材の特性を理解してもらっています。

この素材でこのデザインだと10年後にはこんな変化があるよ、など。

長く愛着を持って着けてもらいたいからこそ、10年後20年後はこうなってくるよ、と想像させてあげるのもプロの役目。

ただ作って売るだけではなく、オーダーする方たちの想いに応えていく。

そんな職人でありたいと常々思います。