最近なぜか、[ホワイトゴールド 販売中止 理由]といったキーワードでこちらのブログに辿り着いている人が増えているので、国内でホワイトゴールド製品の販売が中止され易い理由についてお話しようと思います。
これはあくまでも僕の経験談ですので、どこかのブランドやメーカーのホワイトゴールド製品の販売中止理由を検索している人達に適切な情報かは分かりませんが、少しでも興味がある方はご一読下さい。
日本国内でホワイトゴールド製品が販売中止されやすい理由
プラチナの存在
そもそもホワイトゴールドは、プラチナを宝飾品に使用しないヨーロッパでは馴染みがありますが、日本国内ではそこまで馴染みがありません。
日本をはじめとする一部のアジアの国ではプラチナを宝飾品に使用する習慣の方が強く、銀色で最上級の宝飾品=プラチナ、というのが一般的な方程式でした。
価格も実際に金の方が安かった時代が長かった為、ホワイトゴールド自体10年程前までは、プラチナと同じような銀色が良いけどプラチナは高価で手が出せない人の為に存在したような材質でした。
(プラチナと比べてホワイトゴールドの地の色のワントーン落ち着いた黒っぽい色味が好きな方は極稀にいらっしゃいましたが)
2021年現在では金の方がプラチナ価格よりも高くなってしまいましたが、国内においては金の方が安かった時代の名残が強く、プラチナは想像出来るけどホワイトゴールドは何かよく分からないといった人も多いと思います。
金とプラチナの価格の逆転
これは特に今だったら、説得力のある理由の1つとして挙げられるのではないでしょうか。
何十年と続いてきたプラチナ価格>金価格の関係性、これが2015年以降逆転したのは世界に大きな衝撃を与え、世界経済にも大きく影響した事が記憶に新しいと思います。
そこから金の価格は大幅に上がり続けここ2020年にはグラムあたり7,000円を超えた日もありました。
今ではプラチナよりも金の価格が高くなってしまった故に、メーカーやブランドも金製品を作りたくない、と言うのが本音だと思います。
製造するにしても企画段階で、極限まで使用するグラムを減らさないと販売価格が跳ね上がってしまい、作ったとしても全く売れなくなる可能性がある事。
製造しても原価が上がってしまい、全く利益が出ない可能性なども懸念材料になるでしょう。
実際ここ数年で倍近く原価がはねてしまった訳ですから、金が安かった時代に製造した製品は、仮に売れても想定していた利益が全く回収出来ていないのが様々なメーカーやブランドの現状です。
メッキ加工の必要性
ホワイトゴールドといえばメッキとセット。
メッキについて知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
メーカーやブランド側からすると、この作業が手間になってきます。
例えば販売する店舗で長年サンプルとして使用してきたホワイトゴールド商品サンプルも、様々な人が触り傷ついてくればメッキが剥げて地の色が出てきてしまうので、その度に再度メッキ加工をしなければなりません。
これはブランドによって異なりますが、厳しい最高級のブランドになってくるとメッキ加工をするにも、全てメッキを綺麗に剥がしてからじゃないとメッキのかけ直しをしないブランドの仕事もありました。
最近では国内でも極一部のショップやオーダーメイドが出来る工房に注文すると、ホワイトゴールド製品にメッキをかけるかどうか選べます。
暗い地の色が好きな人はそのまま、メッキをかけたい人はメッキ加工をお願いするイメージですね。
加工し難い
僕のように作る側の人間からすると、プラチナに比べる金全般は加工がし難い素材と言えるでしょう。
金と言うと一般的には
- イエローゴールド
- ホワイトゴールド
- ピンクゴールド
の3種が最も代表的な素材ですが、この中で特にホワイトゴールドだけは割金との関係性上、研磨する際に巣(ス)が出やすく職人でもホワイトゴールドの研磨だけは苦手、といった人も結構存在します。
ここでの巣とは、表面がツルっとした鏡面ではなくボツボツと穴が開き、金属の表面が荒れてしまう現象の事だと思って下さい。
素材の特性上、ホワイトゴールドは強く研磨するとゴマ巣と呼ばれる巣の集合体が最も出やすい素材となります。
研磨が上手な人でないと、いつまでも仕上げる事が出来ずに巣との戦いに長時間を要します。
熟練した職人であれば対処の仕方も熟知しているので何も問題はありませんが、そこまでの技術を持った職人も多くはなく、仮に納品出来るレベルに加工出来ても、他の貴金属と比べて手間がかかる事には変わりありません。
また、返品率が1番高いのがホワイトゴールドといった工場や工房も多いのではないかと経験上思います。
例えば、メーカーやブランドが商品を製造する工場や工房に仕事を投げる → 工場や工房で製品が作られメーカーやブランドに商品が納品される → メーカーやブランドの検品に引っ掛かり返品される、といった具合です。
返品されると、工場や工房は指示された修正箇所を修正して再度メーカーに送らなくてはなりません。
しかもこの修正費用をメーカーやブランドが持ってくれる訳ではないので、どの工場も工房も仕事としては最もやりたくない仕事に部類される事が多いんですよね。
こうした時間的にも労力的にもロスが多く手間ばかりかかるのがホワイトゴールドなので、販売側からも製造側からも良い印象はありません。
まだ理由は他にもありますが、代表的な理由を挙げて解説させて頂きました。
ホワイトゴールドはプラチナと比べると地の色は暗く、ちょっとクールな印象の輝きなので個人的にはメッキをかけていないホワイトゴールドなら好きです。
摩耗して剥げてくると地の色が確認出来ると思うので、お手持ちのホワイトゴールド製品があれば是非確認してみて下さい。