パールが留まっている指輪、イヤリング、ピアスなどパールを使ったジュエリーの多くは定期的なメンテナンスが必要です。
普段ジュエリー制作をしていても感じますが、この事実を知っている人はあまり多くありません。
パールを宝飾品に使用する際、どんなデザインであっても穴を貫通させて通すネックレス以外のタイプのパールジュエリーは、基本的に接着剤が使用されています。
この接着剤が時間の経過と共に劣化していくので、実は定期的なメンテナンスが必要なのです。
パール用の接着剤はエポキシ樹脂
まずはパール用の接着剤について触れておきましょう。
接着剤と言っても、家庭用のボンドやアロンアフファのような瞬間接着剤ではありません。
一般的にパールに使用されるのはエポキシ樹脂系の無色透明~無色半透明の接着剤です。
硬化剤と接着剤、2種類の液体を混ぜる事で化学反応させ硬化させる為、隙間を埋めたり穴に注入するのには最適なので、最もパールに適した接着剤となります。
穴や隙間を埋める作業が何故必要なのかは後程解説します。
粘りがあるので耐久性もあり、瞬間接着剤ほど強固ではないものの、それ故に一度柔らかくして剥がして再度新しい接着剤を付ける事が可能です。
メンテナンスの仕方
実際のメンテナンスの仕方は、
- お湯で煮沸してパールについた接着剤を柔らかくする
- パールを外す
- パールに付いた接着剤を全て剥がす
- 新たに接着剤を流し硬化させる
といった具合です。
パールは芯棒に付け接着されている
たまたま手元に画像があったので紹介しますが、こちらは僕が実際にお客様から頼まれ、指輪についていたダイヤモンドやパールを外したところです。
(後に枠を下取りする予定で全てのお石を外しました)
見て頂くと解る通り、パールの受け皿になるパーツから芯棒が立っています。
パールにある程度の深さの穴が開いていて、そこに裏皿から出た芯棒を突き刺し、突き刺す棒や穴の中に接着剤を流す事でパールを留めているのです。
上から見ると、劣化して色が少し茶色っぽくなった接着剤が、まだ指輪に残っている部分が見えると思います。
新たな接着剤を流す場合は、この古く固まった接着剤を全て取り除く必要があります。
爪で押えられていても、パール内部や裏側で接着されている
接着剤の流し方やパールの突き刺し方は、例え貴金属の爪で押えられているデザインでも変わりません。
接着剤が硬化し、パールが固定された後から貴金属の爪を曲げていくので、2重で留まっている事になります。
ただし、実際には後から倒しながら降ろす爪は飾り爪のようなもので、完全にパールに触れていない場合も多々あります。(もちろん限りなく綺麗に隙間なく倒れた爪ほど綺麗で望ましいですが)
有機質であるパールに硬い貴金属が当たり擦れたら、それだけで深いキズがついてしまうからです。
メンテナンスが難しいデザインの場合
パールには定期的なメンテナンスが必要とは言ったものの、例えば指輪に留まっているパールが爪で周囲から抑えられている場合などはイレギュラー。
何度も貴金属の爪を起こしては留め直していると、当然金属疲労が起こりどこかのタイミングで折れてしまう可能性があります。
- 留め直せる回数に制限がある
- 例え接着剤が劣化して効力を失っていても、爪がある事でパールが外れない
こうした事を考慮すると、デザインや状態によっては無理にパールを外して接着剤を付け直さない方が良い場合もあるので注意が必要です。