【指輪】18金ピンクゴールドリングのサイズ直しが出来ない、難しい、婚約指輪や結婚指輪に不向きな理由。




 

いつの時代も一定の人気があるゴールド。

イエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールドの3種が貴金属で使用されるゴールドの最も代表的な種類となっています。

そして、特に女性からは昔から人気なのがピンクゴールド。

最近では、ブランドやメーカーによって既存のピンクゴールド色よりも淡いシャンパンカラーよりのものや、より濃いピンクカラーのものなど独自に開発された様々な種類が存在します。

それらの可愛いピンクゴールドで作られたリングは、サイズ直しが非常に困難な可能性があります。

過去にこちらの記事でも、金の中でも特に18金ピンクゴールドの大幅なサイズ直しが難しい件に触れました。

プラチナ、金、銀の硬さや強度を比較。それぞれの素材の特性やメリットなど。

2021-02-20

 

しかし、まだまだ知らずにエンゲージリング(婚約指輪)やマリッジリング(結婚指輪)などをピンクゴールドで作り、後からサイズ直しが出来ないと断られ後悔するお客が後を絶たないので、注意喚起記事としてまとめてみました。

 

 

18金ピンクゴールドリングのサイズ直しが不可能、または困難な理由

 

記事タイトルはピンクゴールドと特定の素材を指していますが、プラチナや銀などその他の貴金属に比べると、ゴールドという素材はサイズを直す事がより難しい素材です。

この場合のゴールド全般とは・・・

  • イエローゴールド
  • ホワイトゴールド
  • ピンクゴールド
  • グリーンゴールド
  • レッドゴールド

などを指します。

そしてこれらの素材の修理やリメイクが綺麗に出来るかどうかは、金の割合(純度)も大きく関係していきます。

最もゴールドジュエリーで多く使用される割合は18金、つまり金の含有率75%です。

その中でも特に18金ピンクゴールドはサイズ直しに不向きで、大幅なサイズ直しが出来ない素材として僕達職人には知られています。

これは18金ピンクゴールド特有のいくつかの性質に由来します。

 

硬さ

貴金属としてゴールドと肩を並べ比べられる事が多いプラチナと比べても、まず18金自体が非常に硬い素材です。

これはイエローゴールドでもホワイトゴールドでもピンクゴールドでも、18金であれば全てに共通して言える事です。

そして18金など比較的高純度の素材では展延性(てんえんせい)が低く、何度も火をあてて材料を柔らかくしながら加工するのも一苦労。

折ったり曲げたり伸ばしたり形を変えようとすると、より大きな力が必要となる素材という事になります。

リングのサイズを直す際も、リングをカットし再度曲げながらサイズを調整する必要があるので、デザインや素材によっては難しくなってしまうのです。

 

バネ性

これも18金であれば、イエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールドなどカラーは関係なく持つ特性となります。

また、これは僕らのような職人として作り手でないと知り得ない情報なのですが、ゴールド(金)はバネ性が非常に強い素材なのです。

どういった現象なのか簡単に説明する為に、細長い一本の18金の棒を想像してみて下さい。

ぐっと金属を曲げると通常多くの貴金属は曲げた通りの位置で止まりますが、18金全般はこの位置から少し手前に戻ります。

このように、ある位置まで曲げようと思うと必要以上に曲げないといけないので、サイズ直しでリングの腕を曲げる際も加工がし難いのです。

(新米の職人が宝石を留める際、プラチナジュエリーの石留めよりもゴールドジュエリーの石留めで宝石を割る失敗の割合の方が多い理由がこれですね)

 

ひび割れ

これがピンクゴールドに非常に大きく影響する作用なのですが、他のゴールド素材と比べると、ひび割れし易いです。

大きくサイズを直そうとガンガン曲げて強い力で叩いて変形させてゆくと、銅の成分が入ったピンクゴールドは素材の構造上、ひびが全体に入ってしまい修復不可能となる場合があります。

多少のサイズ変更であれば可能ですが、大幅なサイズ直しが出来ない理由がこのひび割れとなります。

この辺りは、サイズを直したいジュエリーにどれぐらいのボリューム(体積)があるのか、脆い宝石は留まっているか、どの程度(何番)サイズを直すのかにより決まります。

また、こればかりは加工をする職人の感覚でしか頼れないので、明確なルールはありません。

全て職人の経験則でしか判断が出来ない部分なので、大抵のブランドや店頭では修理を断られる事がほとんどでしょう。

 

 

10金など低純度のゴールド(金)のサイズ直しは可能か

 

金の純度が低い程、割金(そのものに含まれる金以外の素材)の量も多く、基本的には

16金→14金→12金→10金→8金・・・

と金の割合が低くなる程、素材は柔らかくなる傾向にあります。

よって、ゴールド素材全般はいくつかの理由からサイズ直しが困難な場合があると解説してきましたが、純度の低いゴールド素材は例外です。

デザインや素材によって、修理を担当する職人や工房、企業などが判断する事となるでしょう。

 

 

店頭では将来起こりえる事は教えてくれない

 

今回の記事で紹介したような情報は、まず店頭ではあまり教えてくれないでしょう。

販売する事がゴールの販売員は売上を作るのが仕事ですから、当然マイナスになるような事などは客に伝えません。

例えば、変形する事やダイヤなど留まっている宝石が落ちてしまう事など。

何より、店頭に立つ販売員はジュエリー制作の経験など無い人が大半なので、そもそも貴金属に関しての知識などあまりありません。

(ハイブランドの店員は多少知識がある方が店頭に立たれてますが、それでも制作やアフターケアに関しての事には無縁でしょう)

故に貴方が購入を検討している商品が5年後~10年後にどう変化してゆくか、デザイン的にどんな事に気を付けて使用するべきかなど、細かな事まで説明してくれる事はまず無いと思って下さい。

こうした背景を考慮すると、客となる自分達がある程度の知識を持つしかトラブルを回避したり後悔しないよう選択する方法は無いのです。

少しでもそうした事に役立てて頂く為にこのブログは存在します。

不動産などもそうだと思いますが、決して安い買い物ではない事がほとんどです。

高額なジュエリーを購入する前にちょっと立ち止まってみて、そのジュエリーのデザインや素材、販売元のアフターケアなども調べてみる事を心がけていきましょう。