不要な貴金属をお店に引き取ってもらう際によく耳にする、買い取りと下取り。
皆さんは、
- 貴金属を買い取る
- 貴金属を下取りする
それぞれの違いを理解していますか?
実はあまり違いを理解せず、どちらの言葉も曖昧に使っている人が一般の人では大半です。
実際に僕が十数年ハイジュエリー制作職人を続けてきて、”買い取り”と”下取り”を混同しているお客様が多かったです。
何気なく同じようなニュアンスに聞こえる言葉ですが、全く別の意味を持っているので、それぞれの意味と違いを再度確認してみましょう。
違いを認識しておく事で、新たなジュエリーをオーダーする際や、工房、ブランドショップ、貴金属買い取り店で買い取ってもらう際に迷わず注文出来るようになりますよ!
買い取りとは
買い取りとは、その文字通り貴金属を買い取ってくれるサービスの総称です。
貴金属の高騰が加速したここ20年程では、スーパーやデパート、ショッピングモールなどの一画に、不要貴金属を買い取る専門店を多く見受けられるようになりました。
そうした場所に地金や不要な貴金属を持ち込むと、大体の場所ではその日の相場 + 手数料で買い取ってもらえます。
(手数料込みの金額の場合は別途の提示などは無い場合も)
この時に注意しなければならないのは、買い取りに出す宝飾品についている宝石は買い取り対象にならない事。
※買い取りには貴金属の地金しか含まれません。
地金とは、プラチナ900、18金イエローゴールドなど貴金属の材質の事。
その材質のグラム単価をその日の買い取り価格 + 手数料で下取りとなります。
最近では宝石にも値段を付けてくれる場所も増えてきてはいますが、基本的には値が付かないと考えた方が良いでしょう。
また、値が付いたとしてもかなりの低価格となります。
それであれば宝石は全て外して、次に何かオーダーする際に持ち込めるよう手元に残しておくのがベター。
買い取りしてくれる場所
- 買い取り専門店
- 自社で地金を売買している企業の窓口
- 極一部のジュエリー工房
冒頭でも述べたように、買い取り専門店は買い取る対象の範囲は違えど様々な場所で見られるようになりました。
貴金属や宝飾品専門で買い取る場所から、最近ではブランド品や金券も含めて総合的に買い取りをしているチェーン店も幅広く展開していますね。
自社で地金の取り扱いをしている1番有名な国内の企業は田中貴金属あたりでしょうか。
東京の宝飾品問屋街である御徒町に構え、買い取りサービスを提供している企業窓口であれば、大抵は買い取り所入り口付近や外にその日の買い取り相場が表示されています。
ジュエリー工房ではあくまでも一部のみ。
なぜ一部の工房のみなのか?
中小様々な規模の工房がありますが、限られた資金で月々運営して回していかなければいけない工房に、買い取り希望客が殺到する事をイメージしてみて下さい。
現金を常に配る事となり、小さな工房は特に経営を圧迫するだけになってしまいます。
こうした事が起こらないように、買い取りのみは受け付けていないけど下取りは出来ます、といった工房がほとんどなんです。
買い取りを受け付けていても、値段をあえてかなり割高に設定する事で買い取り希望客が多くならないようコントロールしている場所もあります。
下取りとは
下取りとは、何かジュエリーを購入したりオーダーする際に不要なジュエリーを預けて、預けたジュエリーの地金相場価値を最終的な値段から相殺する事。
例えば、5万円のジュエリーのオーダーをして2万円分の不要なジュエリーを下取りしてもらえば、3万円の値段を支払えば済む事になります。
※この時の下取り価格には、買い取り同様に貴金属の地金しか含まれません。
僕は必ずどんなお客様にも、下取りに出す宝飾品に留まっている宝石は全て外してから出すようにご案内しています。
それは自分の工房で下取りをするお客様でも、他社で下取りを出す予定をしているお客様でも変わりません。
また、下取りをお願いする場所によって手数料が異なったり、その日の相場で売買する場合もあれば月毎の変動で下取り価格を設定している場所もあります。
まずは下取りしたい品を持ち込み、総額でいくらの相殺が出来るのか聞いてみてから判断するのが良いでしょう。
下取りしてくれる場所
- デパートメントストア(デパート内のお店)
- 一部のブランドショップ
- ジュエリー工房
デパートメントストアと書きましたが、いわゆるデパートの事です。
そして正確にはデパートの中に入っているお店の事ですね。
ほとんどのデパートにファッション品を取り扱うフロアがあり、そこに宝飾品を取り扱う店舗が最低でも数店舗は入っているので、その中から選ぶ形となります。
ブランドの路面店などでは下取りをしてくれるのは一部です。
基本的にブランドショップは自社の商品を売り利益を上げる事が最大のゴールです。
下取りやリフォームなど、時間や手間がかかったり利益に直結しない事は受けない場所も多いです。
一方、ジュエリー工房は多くの場所で下取りが可能です。
制作作業にそのまま流用出来るので利便性が向上するからです。
例えば修理の依頼を受け、細かいパーツを手作りで作ろうとした時にお客様から下取りした材料を使って修理する事があります。
工房を運営するあたり、材料となる様々な地金を角棒状で仕入れて準備はしていても、小さなパーツを作るのに毎回大きな材料から切って作り出していては手間ばかり掛かってしまうからです。
貴金属の買い取りと下取りのまとめ
- 手数料は場所によって違う
- ほとんどの工房では買い取りは受け付けず下取りのみ
- 買い取りや下取りに宝石の価値は含まれない
- 下取りに出すジュエリーの宝石は全て外して手元に残しておく
2000年代に入り、貴金属の価格高騰は益々加速しています。
その日の相場で上下はあるでしょうが、長い目で見たら価格がずっと右上がり。
これからも下がる事は無いでしょう。
不要なジュエリーもすぐに売らずに、自分がジュエリーをオーダーする際まで取っておけば今よりも高い金額で買い取りや下取りをしてくれる可能性が高いです。
勿論いつ出すかは自由ですが、そうした相場に常に密接である事をお忘れなく・・・。