僕は自分の仕事を他人に伝えると、「アクセサリーを作る職人さんなんですね」とよく言われます。
そして大抵の場合、「どちらかと言うとアクセサリーではなく、ジュエリーの部類ですね」とすぐ切り返します。
皆さんはアクセサリーとジュエリーの違いをご存じですか?
どちらの言葉も、自分が持つ何となくのイメージで使う人が多いのではないでしょうか。
一般的にはアクセサリーという言葉の方が幅広い意味を含み、ジュエリーと比べると馴染みがあるせいか多用されているように感じます。
この記事では、日本国内外におけるアクセサリーとジュエリーの違いについてお話します。
アクセサリーの意味
アクセサリー(英語: Accessory)
- 装身具、装飾品。
- 付属品
(各種製品のオプションや周辺機器など。付属・装飾ソフトウェア。アクセサリ・プログラム、デスクトップ・アクセサリなど。)
Wikipediaより一部引用
日本国内でのアクセサリーの意味
アクセサリーは実は物凄い広い意味を持った言葉で、装身具、装飾品全般を指します。
例えば・・・時計、眼鏡、ベルト、バッグ、革小物など、これらは全てアクセサリーになります。
よく書店やコンビニで見る女性誌にも、バッグや小物も総称してアクセサリーといった言葉が掲載されていますよね。
また、付属品という意味ではカーアクセサリーと言うと車用オプション製品、パソコンアクセサリーと言うとパソコン周辺機器などを意味します。
指輪などの身に着けるアクセサリーに関しては、真鍮、シルバー、その他合金など、安価な素材を使った製品を意味します。
ファッション誌などでもシルバー製品を紹介する時には、シルバーアクセサリーと表現しますが、シルバージュエリーとは言いませんよね?
(※ 極一部ですが、差別化を図る為にシルバー製品に高価な宝石を留め、シルバージュエリーと表現するブランドやメーカーが存在します。)
若い女性が好むような雑貨屋さんなどで購入出来る、数百円~数千円の装飾品がアクセサリーといったイメージです。
天然石のような石が留まっていても、大抵低価格のアクセサリーに付いているものは人工で造られた人造石や練り物などが多いです。
(天然石と謳っていても、天然石では無い事も多々・・・(小声)
英語圏でのアクセサリーの意味
特定の英語圏でもアクセサリーというとブローチ、ベルト、スカーフなど衣服を装飾する小物全般を指します。
日本と違うのは、国や地域によって指輪、ペアス、ネックレスなどの宝飾品はアクセサリーにあまり含まれない場合がある事です。
また、日本語版ウィキペディアにも記載している “付属品” といったニュアンスの強い言葉になります。
こちらの意味で使用する事の方が頻度は多いでしょう。
因みに英英辞書の多くでは、日本語で “付属品” と書かれた部分を更に理解し易く掘り下げた意味合いが記載されています。
日本語に変換すると、「必ずしも必須ではないが、それを足す事である物をより便利、効率的、装飾的にする装置や品目」といったニュアンス。
ジュエリーの意味
ジュエリー(英: jewellery、米: jewelry)
装身具
- 英語で装身具全般のこと、宝飾品はファイン・ジュエリー (Fine Jewelry) と区別する。
- 宝飾品 – 宝石・貴金属を用いて作られた装身具。
Wikipediaより一部引用
日本国内でのジュエリーの意味
ファイン・ジュエリーに関しては後程説明しますが、日本国内においてジュエリーとは宝石や貴金属を使用した宝飾品を意味します。
では宝石や貴金属とは何か?
宝石とは
地球上に無数に存在する鉱物のうち、僕らが “宝石” と呼べる石の種類は実は決まっています。
解りやすい例を出すと、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドなど。
特定の鉱物を宝石として認められる為の細かい条件はこの記事では省略しますが、その希少性や実用性、美しさなどから定められています。
貴金属とは
プラチナ、金、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムの8種類の金属の総称です。
このうちプラチナ、金、銀、稀にパラジウムはジュエリーの主材料として使用されます。
パラジウム、ルテニウム、イリジウムは主材料と混ぜ強度を増す為など、割金として使用されます。
ロジウムとルテニウムはメッキ材料として、電気を通しジュエリーの表面をコーティングする材料として幅広く使用されています。
金属の中でも、希少性が高い金属を貴金属と言うのですね。
ダイヤモンドなどの高価な宝石を貴石(キセキ)、安価な宝石を半貴石(ハンキセキ)と呼ぶのと同じです。
つまり・・・
宝石と認められた石や、希少性の高い金属など高価な素材を使用した宝飾品。
価格的には数万~数千万円といった高価な宝飾品全般ですね。
海外でのジュエリーの意味
Wikipediaで意味を調べると、「英語圏でも装身具全般はアクセサリーという言葉を使うと言っていたのに、ジュエリーも同じ意味になるのか。」と思った方も居るでしょう。
この装身具や装飾品全般をアクセサリーと呼ぶかジュエリーと呼ぶかは、国や地域や文化に依存するとしか言いようがありません。
場所が変われば言葉のニュアンスも変化します。
特にイギリス、アメリカでは、アクセサリーに比べジュエリーという言葉の方が装身具全般を指す言葉の意味としては強いようです。
Wikipediaでも記載されていた通り、特定の英語圏では宝石や高価な素材を使用した宝飾品はファイン・ジュエリーと呼びます。
僕は高校時代をカナダで過ごしましたが、高価な宝飾品はファイン・ジュエリーと呼ばれていました。
非常に紛らわしいのですが、そうした圏内ではジュエリー=日本で言うアクセサリーとなるので覚えておきましょう。
コスチュームジュエリー / ファッションジュエリー
コスチュームジュエリーやファッションジュエリーは、宝飾業界やアパレル業界で使用される言葉です。
意味は国内で言うところのアクセサリーと同じなんですが、特にアート性が強いものや個性的なデザインで、貴金属以外の異素材を組み合わせて加工されたものを表現する際に使用する事が多いです。
どちらの言葉も明確な定義はありませんが、職人として様々なデザイナーさんとお仕事をさせて頂いた経験上、僕の中ではそうしたニュアンスです。
(個人のイメージなので参考程度にどうぞ)
ハイジュエリー
これは国内で使用される言葉なのですが、こちらも明確な定義が実際には無い言葉となっています。
ジュエリーの中でも金やプラチナ+高額な宝石といった、特に高価な部類の宝飾品を指します。
人やメーカーやブランドによっても、ニュアンスが若干変わる言葉でもありますね。
僕は職人人生としてはまだたったの十数年ですが、それなりに様々な高額品や高級ブランドの品物を制作してきました。
その経験からですと、金額的には単品で20~30万ぐらいから上の金額がハイジュエリーといったイメージです。
いくらダイヤとプラチナで作られた指輪でも、例えば5~10万といった金額の品物はハイジュエリーとは呼ばれていませんでした。
(少なくとも僕が居た環境では)
アクセサリーとジュエリーの違い + その他まとめ
- 安価な金属や人工素材で出来た装身具の総称がアクセサリー
- 宝石や貴金属といった高価な素材で作られた宝飾品がジュエリー
- 日本では装身具全般をアクセサリーと呼び、海外ではジュエリーと呼ぶ事が多い
- 海外ではジュエリーと呼ぶだけでは、コスチュームジュエリーやファッションジュエリーを意味し、宝石と貴金属を使ったジュエリーはファイン・ジュエリーになる
- 高価な宝石や素材を使用したジュエリーを、日本国内ではハイジュエリーと呼ぶ事がある
- シルバーも貴金属に含まれるが、材料自体の価格が金やプラチナと比べると安価な為、アクセサリーと呼ばれアクセサリー素材として認識されている
国内外で言葉の意味が変わるので少々紛らわしいですが、日本国内では衣服を装飾する装身具全般全てがアクセサリーになり、海外では日本で言うアクセサリーは全てジュエリーと表現する事が多くなります。
また、日本国内ではジュエリーという言葉の定義を日本ジュエリー協会が “貴金属と天然宝石を使用した宝飾品” と定めていますが、一般消費者の生活や文化には全く浸透していないのが現状ですね。